チタンを自宅でエッチングする方法。陽極酸化のやり直しにも便利です。

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これまでチタンの陽極酸化の方法について何本か記事を書いてきましたが、その都度、陽極酸化被膜をけずってやり直してきたのでかなり大変でした。

酸化被膜を簡単に剥がせる方法をないかなぁと海外サイトも含めていろんな薬品を探しました。

すると、家庭で購入できる薬品でチタンをエッチング(溶かす)ことができることが判明し、それを購入してやってみたら本当に酸化被膜を溶かすことができました。

今回はそのチタンを溶かす方法をご紹介したいと思います。

チタンを溶かすメカニズム

チタンはとても安定な物質で薬品に溶けたりしません。

それは不動態被膜(=酸化被膜)という反応性がとても低い被膜に覆われているからなのですが、この不動態被膜というのは何に対しても不動態(=反応しない)というわけではありません。

ステンレスも錆びない金属ですが、これも不動態被膜に覆われているためでこれはステンレスに含まれるクロムの酸化被膜よるものだそうです(ステンレスは鉄とニッケルとクロムの合金です。一部例外あり)。

クロムの酸化被膜は塩素に弱いなど一部の薬品に対しては反応してしまいます。

チタンの不動態被膜に関しては酸性条件下でフッ素が存在するとチタンが反応して溶解するそうです。(参考文献1)

いろいろな文献を見ていると反応式はこちらのようになっているようです。

2Ti + 6HF → 2TiF3 + 3H2
Ti + 4HF → TiF4 + 2H2

日本で購入できる薬品がこちら

海外では一般的に購入できる「Whink Rust Stain Remover」という洗剤を使用するそうなのですが、日本では同じ洗剤はありません。

チタンの陽極酸化に関する記事、動画でよく出てきます。

この「Whink Rust Stain Remover」のSDSを見てみると、「Hydrofluoric acid(フッ化水素、フッ酸)」と書かれており、やはりフッ化物が含まれているようです。

日本で販売されている洗剤でフッ化物を含むものがないか探してみましたが、なんと、ありました!

それがこちらです。

ヒルナンデスでも紹介された洗剤だそうです。まさかこんな用途で使われるとは思っていないでしょう。

成分の欄を見ると確かにフッ化物が含まれています。

エッチング ビフォーアフター

実際にこちらの薬品に付けてみるとこんな感じで反応します。

反応するまでのタイムラプス

反応させると陽極酸化でできた酸化被膜もこのように変化します。

液に付けて数秒は何も反応しませんが徐々にガスが発生してきます。

そのまま数分置いておくと写真のように黒っぽくなります。

表面は細かい粉に覆われているようになりますが、拭き取ることが可能です。

エッチングの後はやはり溶けているからか若干白い無光沢な色みになっています。鏡面光沢にしていたとしてもそれはおそらく保てません。

いぶし銀のような色にも似ているのでこれはこれでひとつの色味としてはかっこいいようにも思います。

発生するガスは前述の反応式にあるように水素だと思われるので直接的な体への害はないと思いますが、火を近づけると爆発しますので注意が必要です。

また、この洗剤自体も先生タイプでアルカリ性のものと混ぜると何らかのガスが発生すると思われますし、塩素系の洗剤と混ぜると危険とも書かれているので取り扱いには注意してください。

ちなみにこの「1分でキラリ」に含まれている「一水素二フッ化アンモニウム」はガラスを溶かすこともできるらしく、この洗剤を使って汚れを落とす主成分はこれなんでしょうね。

ちなみにエッチングした後に再度陽極酸化等の処理を行うときは表面を研磨して磨いてあげたほうがいいと思います。

こちらの記事で紹介しているような不織布のヤスリが研磨しやすいのではないかと思います。

エッチングをするとスマットがつくので研磨するのもいいのですが、薬品で研磨することもできます。

チタンの酸化被膜による色付けについてはこちら

以上です。

陽極酸化についてはこちらの記事にまとめていますのでぜひ合わせてご覧ください。

参考文献

  1. インプラント材料Q&A https://www.shien.co.jp/book/sample/s3/8514.pdf
  2. フッ化水素酸中におけるチタンの見かけの活性化エネルギー https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1950/21/4/21_4_189/_pdf
  3. フッ化物水溶液に耐食性を示す歯科部材用 Ti 合金 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcorr/63/5/63_309/_pdf
  4. Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/フッ化アンモニウム

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