【書評】データビジュアライゼーションの教科書
ビッグデータという言葉が一般的になりつつある現代。
データを分析したり、集計、加工し、解釈することが当たり前になっています。
誰もが会社のパソコンにエクセルが入っていて、当たり前のようにデータの加工を行なっているのではないでしょうか。
そういう私もエクセルでのデータ整理、分析が業務の主たる部分になっており、データから何が言えるのか、次にやるべきことはなんなのか、そういうものを導くことを求められています。
ただ、いつも悩むのは報告会でもこのようなデータを求められ、報告をしたときに「理解しにくい」「もっと分かりやすくしろ」と言われることです。
こちらとしてはかなり複雑な分析の果てに導き出したことだからシンプルにしろと言われても良い表し方がわかりません。
今回はそういうなやみがある中で目についた「データビジュアライゼーション」という本をご紹介します。
データインクレシオ
冒頭で述べましたように今の時代、データはそこら中にあります。
IoTなんかでこれまで以上にデータの量が増えて来ています。
ですが、データがあるだけでは価値はありません。加工し、解釈し、次の行動を決めることができることで価値が生まれます。
そのためにデータを加工し、解釈する必要があるわけですが、ここがうまくできていないというのが私の悩みでした。
その上で重要な考え方だと感じたのが「データインクレシオ」というものです。
データそのものを表す部分(例えば棒グラフの棒の部分)を「データインク」、それ以外を表す部分(例えばグラフの枠線や軸の補助線といった部分)を「ノン・データインク」と呼びます。データインクレシオはその比率です。
データビジュアライゼーションの教科書 第2章 データビジュアライゼーションとは
データを加工(データビジュアライゼーション)し、自分や相手が解釈・理解する時に、その内容をわかりやすくする効果(シグナル)を最大化し、データが持つ原来の意味ではないものが相手に伝わってしまう効果(ノイズ)を最小化することがデータビジュアライゼーションの目的であり、データインクレシオはそれを測る一つのパラメーターと言えます。
インフォメーションデザインの分類
データビジュアライゼーションはインフォメーションデザインとデータアートに分かれるそうです。
インフォメーションデザイン:課題解決のためのデータ視覚化
データアート:自己表現のためのデータ視覚化
本書はインフォメーションデザインを対象としており、インフォメーションアートはさらに4つに分類できるそうです。
分類 | 説明 |
---|---|
仮説検証型 | ある仮説をデータを使って検証し、事実かどうかを裏付けるための視覚化 |
仮説探索型 | 特に仮説がなく、データの視覚化を通じて仮説を立案していく |
事実報告型 | 事業運営場、定点的に確認すべき指標値を定型フォーマットで報告するためのデータ視覚化 |
事実説明型 | 仮説検証型や仮説探究型のデータ視覚化の結果として確認された事実や発見を読み手に理解しやすいように説明するためのデータ視覚化 |
私が日々行っている分析作業は、この中では、仮説検証型、仮説探索型がメインで、冒頭に述べたような悩みは事実説明型の部分の悩みに該当しそうです。
改めてデータまとめの役割、目的を考えたことがなかったのでこのように分類されると自分がどこに迷っていて、どこを強化する必要があるのかがわかりやすくなりますね。
使えそうだ思ったグラフ
どう言ったグラフの種類がいいのか、フォントなど細かいことまで書かれているので資料を作る際には隣でこの本を広げながら作業したいところですが、特にこれは使えそうだと思ったものがこの2つです。
基準点を揃える
これは良い参考画像が見つけられなかったので言葉のみの説明になってしまうのですが、折れ線グラフで複数の項目を一つのグラフにすることがあると思います。(こういうグラフはスパゲティチャートと呼ばれるそうです。)
そうなると各項目の傾向、増えているのか減っているのか、わかりにくかったりします。
そういうときにある時点の数字をゼロとして一つ前の値に対して何%増減したのかでグラフを組み直すと傾向が見えやすい、そういうグラフです。
実物をみないとイメージしにくいと思いますが、これはかなり使えそうだなぁと思いました。
ブレットチャート
多くの企業は現在の売り上げなどの数字を前年比、計画比で見ると思います。
エクセルなんかではそれぞれの前年、計画、実績を横並べの棒グラフにしたりすると思いますが、それを一つにまとめることができるグラフです。
複数年で前年、計画、実績、を並べていくと棒がたくさんできてしまいますが、このブレットチャートを使うとすっきりとしたグラフにできそうだなぁと思いました。
データインクレシオを高めるためにどうすのか
このように様々な方法がこの本の中には書かれているのですが、まとめるデータインクレシオをどうやって高めていくのか、そのためにはどのような手法があるのかということです。
また、データインクレシオを高めるということはどのようなことがデータインクレシオなのかはっきりしないといけないということだと思います。
データインクをはっきりさせる、つまり、言いたいことがなんなのか明確にするということができないとこの本に書かれていることが活かせないかなぁとも思いました。
それと私のように報告する側の人間だけではなくて報告を受ける側の人もこの本を読んで見て欲しいとも思います。
報告を受ける側のデータリテラシーが低いとどんなに発表する側が頑張ってデータインクレシオを高めても意味がありません。
発表されたことの意味を読み取ろうとし、発表資料を土台に議論して次につなげようとする意識を持ってもらえると嬉しいですね。
報告するためにどんなに努力して、時間を使って準備しているのか。報告するたびにやり直しと言われたら時間の無駄ですし、やる気もなくなります。
わかりやすい資料を作るのは全て発表する側の責任ではなく、お互いにデータリテラシーを高めていこうという姿勢が必要だと思います。
最後は本書の内容とはちょっと違ってしまいましたが、これからの時代、生きていく上でデータを取り扱うことは非常に重要なスキルだと思うので、この本を読んでわかりやすく発表するには、そのグラフが意味することを読み取るには、そういうことを勉強できる本書は一読の価値があると思います。
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