【書評】『13歳からのアート思考』大事なポイントは“探求の根”
充実した人生を送りたいと思わない人はいないと思います。
私は毎日ウキウキ、ワクワクした人生を送りたいと思っています。
会社員をやっていますが、毎週日曜日に「明日から仕事かぁ」と考えるのがすごい悲しいことだと思うんですよね。
仕事が始まっても「早く休みにならないかなぁ」なんて思ってしまっています。
人生のほとんどの時間を過ごしている仕事でそんな風に考えてしまうのってすごいもったいないと思います。
同意して頂ける方も多いかと思いますが、じゃあどうすればそういう人生を送ることができるのが、それがとても難しい問題です。
今回ご紹介する「13歳からのアート思考」はそんな疑問の答えになるかもしれないことが書かれている、そう思える内容でした。
「自分なりの答え」を作り出すための作法「アート思考」
アート思考という言葉を最近よく見るようになってきたように思いますが、VUCAと言われる不確実性が高まった現代で必須の思考法という書かれ方をしています。
スマホが発達して様々な情報を非常に簡単に取得できるようになりましたし、個人レベルで非常にたくさんの情報を発信できるようになりました。
物事もグローバルに絡み合い、変化のスピードが非常に高まっているというのが昔と変わってきていることだと思うのですが、そういう世界では「正解を見つける力」は通用せず、「自分なりの答えを作り出す力」が求められると言います。
この「自分なりの答えを作り出す力」を身につけるのが「アート思考」という思考法だと本書では主張しています。
①「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、
②「自分なりの答え」を生み出し、
③それによって「新たな問い」を生み出す
「アート思考」とはまさにこうした思考プロセスであり、「自分だけの視点」で物事を見て、「自分なりの答え」を作り出すための作法です。
「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考 末永幸歩(ダイヤモンド社)
本書では教養としてアートがどういうものかを伝えるのではなく、厳選した20世紀の6つの作品を通して「アート思考」がどう言ったものなのかを伝えようという内容になっています。
史上5番目の高額で取引された絵
ここでは1つの例を引用させていただいてアート思考とはどういうものなのかをご紹介したいと思います。
ジャクソン・ポロックという人の「ナンバー1A」という作品は2015年に2億ドルという金額で取引されたそうで、この金額は2020年1月現在、歴代で5番目に高額だったそうです。
これがその「ナンバー1A」です。
これが2億ドル。まさにアートという感じです。
なぜここまで評価されているのか、その理由にアート思考、「自分だけの答え」を見つけることにつながっていると言います。
詳細な説明は本書をお読みいただきたいのですが、基本的に絵を見るということは描かれたものをきっかけに、見る人が何かの「イメージ」を広げます。
「犬」の絵があったら「 犬」を想像するわけです。
でも実際、そこに存在しているものはただの「絵」であるわけです。
この「ナンバー1A」という作品は何を書いているのか分かりませんが、それが狙いであり、ポロックの作品がすごいのは人間の「イメージ」する力を取り払って「物質としての絵そのもの」を見せようとしているところなのだそうです。
「他の何にも依存しない『アートそのもの』があるとしたら、それはどんな姿をしているのだろう?」———彼はそんな問いに向かって「探求の根」を伸ばし始めたのです。
「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考 末永幸歩(ダイヤモンド社)
そしてついにポロックは《ナンバー1A》によって、アートを「何らかのイメージを映し出すためのもの」という役割から解放しました。これによって絵画は「ただの物質」でいることを許されたのです。
「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考 末永幸歩(ダイヤモンド社)
自分なりのものの見方で自分なりの答えを見つけて、それを表現した。
その答えが色々な人に受け入れられ、価値観を変えていったから歴代5位の高額で取引された、ということなのです。
興味のタネ、探求の根、表現の花
本書のキーワードで「興味のタネ」「探求の根」「表現の花」というものが出てきます。
興味のタネをもち、それを探究しながら根を伸ばし、ある時その根がつながって表現の花が開花する。
前述のポロックの例でいうと、「何にも依存しないアートは何か」という興味のタネをもち、日々、制作活動をして、その結果としてあるとき「ナンバー1A」という作品ができたということだと思います。
「真のアーティスト」とはこの探求の根を伸ばしていくこと自体が楽しくて、花が咲くかどうかに興味がない、その過程を楽しんでいる人のことだと言います。
アーティストとして生きること
VUCAの世界で仕事をしていると色々なタスクをたくさん与えられて、それをこなしているわけですが、他人から与えられたタスクをこなしていくことが生きることのようになってしまっています。
他人が定めたゴールに向かって作業しているこのような生き方を本書では「花職人」と呼んでいるのですが、不確実性がこれほどまで高くない時代には決められたレールに沿って優秀な「花職人」が多く求められていたのだと思います。
それはそれで面白みのある生き方ではあると思いますが、VUCAの世界ではその生き方で充実した満足のいく人生を送れないというのが本書の主張だと思いました。
アート思考を身につけて自分の興味の根を伸ばしていくことこそ充実した人生になっていく。探求の根を伸ばしていればいつかその根が繋がって美しい花が咲くから探求の根を伸ばしたくなる興味の根を見つけましょう。それが現代人には足りないから、アートを活用してそれを見つける力をつけましょう。そういうことだと思います。
そう言われても探究したくなるような興味があることなんてないよと思われる方も多いと思いますし、それを見つけるのが難しいんだというご意見もあるような気がしますが、それは別問題として、私は本書の主張は的を得ているし、ただ、会社に流されるのではなく、能動的に生きることが人生では必要なのだろうなと思います。
「真のアーティスト」として生きるために私はアクセサリーを作ったり、ギターや音楽理論を勉強したりもしていて、その花はいつ咲くのだろうかと不安になったりもしますが、これから探求の根を広げていけばいつか道は開けると、励ましてくれたそんな本でした。
ちなみに興味のタネを見つけるための一つの方法として「エゴリスト」を書くという方法がとても有効なように思います。
エゴリストに関してはこちらの記事で紹介していますのでもし良ければご覧ください。
トラベラーズノートを使って探求の根を伸ばしています。
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